プール

 

「やりたいことはいっぱいあるんだ、

でも一緒にやってくれる人がいない。」

 

って言われたことがあった。

そのやりたいことリストの中にプールがあったんだけど

ためらうよ、そりゃあ。

 

プール以外だったら行けるよ。笑

って私は答えたんだけど、

あの人はどうしてもプールに行きたかったらしい。

 

「泳げないし、焼けるから行かない。」

って言ったら

「泳げなくても助けるし、日焼け止め塗ればいいよ。」

なんて言われた。

 

行っとけば良かった、

恥じらいなんて捨てれば良かった、

楽しい思い出増やせば良かった。

 

でもそしたら、

また一つ今年に悲しい思いをしてたのかも。

 

言った言葉も、言われた言葉も

上書きしてかなきゃ、

生きていけない。

 

 

 

道玄坂の店

 

スイカバーを買った。

わたしはなんで

アイス食べながらぐるっと回って帰ろ?

って言っちゃったんだろう。

 

確かあの日の待ち合わせは、

渋谷のTSUTAYAに21時。

あの人はもう1つのバイトの研修があるから

21時からなら会えるよ

って言ってくれて、私は渋谷に出向いたの。

 

21時過ぎても来なくて

会った瞬間「遅刻!」って言った時

あなたは何か反論しようとしたけど

「ごめん。笑」って言って笑い合ったの

覚えてる。

 

「行きたいところあるんだ。

でも通信制限がかかってて、地図が読めないんだよ

まだ月初めなのにさ、おかしくない?笑」

 

たどり着いたのは道玄坂の沖縄風の居酒屋さん。

 

梅酒はロックがいいのに

って言われてロックで飲むようになったこと、

あんまりバイト先の人とは飲まないんだよ

って言われて喜んだこと、

トマトを一皿全部食べてて

トマトが好きなんだなって知ったこと、

 

好きになってた。

 

 

一気に思い出しちゃった、

あっち側の道、通らなければよかったな。

 

梅酒の専門店

連れてって欲しかったのに。

叶わない。

 

じめじめしてる

 

梅雨は鬱になるから、キライなの。

 

新しく買ったかわいい夏服を着て渋谷を歩いてた。

やっと会える、なんてワクワクしてた。

 

ドトールに入ってお誕生日のメッセージを書いてたとき

あの人からのLINEに気付いて

悲しい思いをして

くしゃくしゃに丸めた紙を捨てた。

 

外に出ると雨が降っていた。

 

今にも泣きそうな顔をして歩いた渋谷は

いつも通りの人の多さで

たくさんの人の笑い声が響いて

私だけ孤独だった。

 

 

あぁ、馬鹿馬鹿しい。

オムライス

 

オムライスがふいに食べたくなるのだけど

そのときはあの人を思い出す。

 

あれは、確かセンター街を歩いていた時。

 

「何食べたい?」

「う〜ん、何がいいかな。オムライスとか?」

「あれ、言ったことあったっけ?」

「え?何を?」

「俺、何食べたいか聞かれたらオムライスって答えちゃうんだよね。だから、やめとこうと思ってたんだ。」

「え、そうだったんだ。笑

好きなら食べたらいいじゃん。笑」

「オムライスばっかり食べちゃダメでしょ。」

「いや、ダメなわけないじゃん。

ってことでオムライス食べよ?」

「うん、いいの?」

「わたしは何でもいいよ、

あっ、ふんわり卵ってとこ行ったことある?」

「知らないなぁ。」

「じゃあ、そこ行こ。」

「連れてって。」

 

こんな会話までこと細かに覚えてる私は

気持ちが悪くなる。

 

私の想うあの人は、

どの子をあの子だと言うのだろう。

 

そんなの、知りたくもない。

 

写真展

 

ヒカリエ9F Bホール

 

そう、あのときと同じ。

大好きな猫の写真展があるから、行きたい

と言って無理矢理こじつけた約束。

それでも、その約束に来てくれたあなたには

私への気持ちがあった。

 

一緒に連絡通路を歩いて

一緒にエレベーターに乗って

一緒に説明を読んで

一緒に猫の写真を見た。

 

グッズ売り場で何か買いたかったわたしにあなたは

「無理して買わなくていいんじゃない?」

って微笑んでた。

 

あのときは買いたかったけど

今となっては買わなくて良かったのかな、

なんて思っちゃうことが悲しい。

 

写真展が好きなのに、写真展が嫌い。

 

ふと思い出す一瞬一瞬が、なんだか切ない。

 

でもね、

不思議とあの人を考える時間がなくなってきてる。

 

神奈川新聞花火大会 08.04.

 

初めての横浜は、あなたでした。

 

あなたは、

屋台が好きなわたしのために

待ち合わせ場所を考えてくれていた。

電車が遅れてると連絡があり、

ドキドキしながら待ってた。

 

かっこいい人がわたしの方に向かってきたと思えば、

白い生地にストライプの入った、

それはもうあなたにぴったりの浴衣姿で。

 

「屋台が好きだって言うから、待ち合わせ場所をここにしたんだよ。高校生のとき以来この花火大会来てないし、そのときは違うところから見たんだ。だから、あんまり場所はよくわからない。」

って言ってた。

なんだか嬉しくなった。

 

何食べたい?と聞いてくれたあなたに

私は食べたいもの全部言った。

全部買った。

逆にわたしが何食べたい?と尋ねるとあなたは、

「じゃがバターが食べれればそれでいいよ。」

なんて、それはそれは大人な対応で。

 

並んでる最中に花火が上がった。

「君の身長じゃ、きっと花火見えてないよね。」

と目を細めて微笑みかけてくれたあなたの顔を

今でも思い出す、

優しく微笑んでくれるあなたが、大好きでした。

 

あなたの好きなじゃがバターを

あなたの手からわたしの口に運んでくれた。

 

忘れられない、忘れない、忘れたくない。

 

悔い

 

誰しも

-あの時の幸せな時間が幸せな時間だった-

だなんて、終わるまで気づかないのだろう。

その時は、それで精一杯なのだから。

 

あなたと落ち合う前に私が電車の中で

「チーズケーキが食べたい」

と言ったら

あなたは会った瞬間に

「あのチーズケーキが食べたいんでしょ?じゃあ、中では食べられないし、検索してみたけど普通にカフェとかになっちゃうよ。」

って言ってくれた。

 

私のために調べてくれて

私のために考えてくれていたことに

私は気付けなかった。

 

そのとき気づかなければいけなかったのに

気付けなかった。

 

私はなんにもわかってなかった。

 

こんなときですらも

嫌なことよりも嬉しかったことを思い出す。

 

なんて、

私はいつまでたってもあなたから抜け出せない。

 

抜け出せない私は、弱い。